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遠心力と向心力〜続き〜

ここでは向心力と遠心力の違いについて具体的に説明しています。

ここでは円運動の例を用いて遠心力について説明したいと思います.
その前に向心力について説明しておきます.


円運動における加速度は円の中心方向(法線方向)と接線方向とにわけられます.そして円の中心方向の加速度に関しては円の中心を向きます.
加速度が円の中心を向くことから円運動している物体には円の中心方向に力が働きます.この力のことを向心力と呼ぶのです.
これだけですと向心力は円の中心に向かう力の事と誤解される可能性があるので述べておきますと,
円の中心方向に関して,円運動している物体には円の中心を向く力やその逆を向く力が働いたりしますが それらを合わせた合力は常に円の中心を向きます.この円の中心方向に関して働く力すべてを合わせて円の中心方向に向かう力を向心力と呼びます.
別の言い方をすると次のようになります.

  • 向心力は静止している人から円運動している物体を見たときに円の中心方向に働く力のこと

  • おそらく言葉でいくら説明してもピンと来ないと思いますので例を用いて説明します.

    上図は半径Rの滑らかな半円筒面に沿って質量mの物体が円運動する様子である. B点から角度θの点をC点とし,C点での物体の角速度をω,C点で物体が半円筒面から受ける垂直抗力をNとし, 重力加速度をg,C点での物体の円の中心方向の加速度をαとします.


    まず,C点において物体に働く力は次の図のように半円筒面からの垂直抗力と重力の二つになります.

    次にC点での垂直抗力はN,物体に働く重力はmgとあらわせるので円の中心方向に働く力は次の図のようになります. わかりやすくするために円の中心方向に働く力のみ書いてあり,接線方向の力は省略しています.

    物体は半円筒面に沿って円運動していますから円の中心を向く方向に向心力が働きます.
    この場合,向心力はmgcosθ − Nになります. mgcosθは重力を円の中心方向と接線方向とに分解した際の,円の中心方向の成分になります.
    円の中心方向に関して運動方程式を立ててあげると
    mα = mgcosθ − N
    となります.円運動における円の中心方向の加速度は円運動の円の半径(この場合R)と,加速度を求めたい地点での物体の角速度(この場合ω)を用いて
    α=Rω2
    とあらわせるので運動方程式は
    mRω2= mgcosθ − N
    となります.ここまでは静止している人から円運動をとらえたときのお話です.


    ではここからは物体と同じ円運動をしている人から物体の円運動をとらえていきます.
    まず物体と同じ円運動をしている人から見ると,物体は静止しているように見えます.
    物体と同じ運動をしている人からみた場合,物体には重力,垂直抗力のほかに慣性力(遠心力)が働きます. 遠心力の大きさはこの場合mαで円の中心から外側を向く方向に働きます.実際に,物体に働く力(円の中心方向のみ)を書き込むと次の図のようになります.

    この場合も向心力はmgcosθ − Nです. 静止していることから物体に働く力はつりあっていますから 円の中心方向に関して力のつりあいの式を立ててあげると mα + N = mgcosθ となります.
    先ほどと同様に円運動の円の中心方向の加速度は α=Rω2 とあらわせるので力のつりあいの式は mRω2 + N = mgcosθとなります.
    補足ですが接線方向にも慣性力が働いて円の中心方向,接線方向ともに力がつりあうので結果として物体は静止してみえるのです.
    以上が物体と同じ円運動をしている人からの視点です.


    結局,静止している人から見た場合も,物体と同じ円運動をしている人からみた場合も物体に関する式の見た目は同じになりました.
    違いは静止している人からの視点か,同じ円運動をしている人からの視点か です.本当に重要なのはこの点だけです.
    これで遠心力について少しでもわかっていただけたらありがたいです.
    しつこいですが遠心力は,円運動している物体と同じ運動をしている人から物体を見たときに,物体に働く慣性力の一種です.


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